※株式会社ハンファ発信の海外プレスリリースより参考情報としてお知らせ配信しています。
世界の海は私たちをつなぎ、地球の果てまで航路を提供しています。広大な航路のおかげで、海運業界の技術革新が進み、海運は主要な輸送手段となりました。
しかし、環境に配慮した業界を目指す必要性がますます高まるなか、海運業は世界の二酸化炭素排出量の約3%を占めています。海運業界における温室効果ガス(GHG)の排出を抑制するため、国際海事機関(IMO)は、2050年頃までにGHG排出量を実質的にゼロにすることを目指し、義務的な対策を採択しています。ネットゼロの達成は、持続可能な慣行による排出量の削減から、CO2排出の完全排除に向けたグリーン燃料の使用まで、様々な手段で実現できます。しかし、これらの方法の多くはまだ開発途上にあるものの、将来的には大規模な展開が予測されています。
船上での炭素回収・貯留(OCCS)技術は、海運業界をより持続可能な方向に進めることができます。船舶に炭素回収技術を搭載することで、海運業界全体のCO2排出量を大幅に削減することが可能であり、タンクから航行中に排出されるCO2(船舶のタンク内で燃料を燃焼させることで発生する二酸化炭素)を75~80%削減できる可能性があります。
炭素回収は具体的にどのように機能し、船舶に設置されるのでしょうか。この重要な技術と、ハンファのような企業がグローバル・カーボン・ニュートラルへの道を後押しする可能性をどのように探っているのか、ご紹介します。
船上での炭素回収・貯留とは?
炭素回収技術は、気候変動対策に貢献するために開発された技術であり、大気中の二酸化炭素を取り除いたり、大気中に放出される前に回収することを目的としています。炭素回収技術にはさまざまな種類がありますが、最も一般的な手法の1つは、アミンを利用したCO2回収です。
このプロセスでは、排出された排気ガス “煙道ガス” をダクトを通して冷却塔に導き、温度を下げます。ガスが冷却されると、吸収塔に移され、アミンと呼ばれる化合物からなる化学溶液にガスを通します。アミンはCO2と結合し、CO2を吸収塔に留める一方、残りのカーボンフリーの排気は大気中に排出されます。そして、純粋なCO2は最終的にガスから液体に変換され、地下貯蔵やさらなる利用のために輸送される準備が整います。
OCCS(炭素回収・貯留)技術は、船舶に炭素回収システムを設置し、船舶の燃料システムに組み込みます。船舶の燃料をガスに変換し、燃焼前にCO2を回収する「事前燃焼方式」と、排気中のCO2をさまざまな方法で回収する「事後燃焼方式」があり、回収されたCO2は、高圧タンク内に液体として、または石灰石などの鉱物状の固体として船内に保管されます。
ハンファオーシャンの液化CO2運搬船
課題の克服と持続可能性の構築
どのような新しい技術にも言えることですが、OCCS技術を業界全体に広げるためには、さまざまな課題に対処しなければなりません。その1つはインフラです。船内スペースには限りがありますが、OCCS技術のためには、炭素回収システムや貯蔵タンク、追加のエネルギーを供給する目的で必要な電力システムを設置するため、十分なスペースが必要です。
また、分離させた炭素を利用可能な形に変換する必要がありますが、現在の炭素利用技術は、炭素を広範囲に利用するには不十分です。炭素を有効に利用するための変換プロセスには高いコストがかかるため、産業展開は依然として限定的な状態です。捕集した炭素の輸送と貯蔵を適切に管理し、さらに貨物の効率的な輸送を可能にするために、インフラを大幅に拡充する必要があります。
こうした課題に取り組み、技術革新を促進するために、ハンファオーシャンは、OCCS技術が高い信頼性を得て、将来に向けた解決策となるよう確実に前進しています。
ハンファオーシャンは2022年、ギリシャの海運会社GasLogと提携し、OCCS技術の開発を積極的に開始しました。ハンファオーシャンはGasLog社から4隻の液化天然ガス(LNG)運搬船を譲り受け、これらの船舶にOCCS技術技術を搭載する予定です。なお、2024年までにこのプロセスを完了し、船舶を返還することを目指しています。
ハンファオーシャンのOCCS技術は、他のOCCS技術に比較して小型でエネルギー消費量も少なく、コンパクトでエネルギー効率に優れ、船舶への搭載・利用に最適です。CO2排出を鉱物の形で安全に捕集・貯蔵する自然な方法として、アンモニア水を利用する可能性を探っており、将来的には陸上で処理したり、海に廃棄したりできるようにする予定です。ハンファオーシャンは、OCCS技術の「基本設計承認」(Approval in Principle:AiP)を取得し、技術設計の実行可能性と規制への準拠を確認しました。AiPは、今後この技術が業界内で地位を確立するための大きな一歩となります。
カーボンフリーの未来を実現するため、ハンファオーシャンは持続可能性を促進し、OCCS技術の潜在能力を最大限に活用するための先進技術の開発にも注力しています。
ハンファオーシャンは、アンモニア、メタノール、水素をベースとした環境に優しい推進システムで動くグリーン船舶の開発に取り組んでいます。排気ガスから水素とCO2を燃焼前に分離する「燃焼前OCCS法」を利用することで、得られた水素混合物を船上の循環燃料として使用することができます。さらに、回収した炭素は固体のカーボンナノチューブに変換することができますが、このカーボンナノチューブは、金属よりも強度が高く、さまざまな構造物や乗り物を構築するのに使用できる建築材料になります。
ブルーオーシャンのためのグリーン・ステップ
海運業界をネット・ゼロにするには、最終的にはアンモニアやメタノールのような低炭素・ゼロ炭素燃料を開発、採用する必要があります。開発は進み、より現実的なものになりつつあるものの、大規模な展開はまだ遠いのが現状です。暫定的ではあるものの、OCCS技術はCO2排出量の大幅削減を実現し、完全な脱炭素化に向けた道のりの中間段階として機能することから、海運業界のギャップを埋めることが期待されています。
ハンファは、業界の専門知識と創造力を活かし、OCCS技術など将来を見据えた技術を構築し、これからも気候変動問題に取り組んで参ります。
企業プロフィール
ハンファジャパン株式会社について
世界710ヵ所の拠点をもち、Fortune Global 500に選出された韓国最大手企業である株式会社ハンファの日本法人として1984年に設立。再生可能エネルギー関連事業(太陽電池モジュール製造・販売、PPS、IPP、PPA事業)をはじめ化学品、鉄鋼、機械・設備、自動車部品、IT関連機器等、多部門にわたる基幹産業のアジア諸国間での輸出入業務と日本市場での販売事業を30年以上にわたり展開している。2011年より日本の太陽光事業に参入し、2022年12月現在、日本向けの太陽電池モジュール出荷量累計7.3GW、住宅用販売棟数 120,000 棟を達成した。
「Qセルズ」ホームページ: https://www.q-cells.jp/